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第八章 4話:離反

~都内私立女子高前~

 

(ブウォン、ウォン……キキィッ!)

朱璃さん、到着しましたよ

梢さん、今朝は車で送ってもらって有難う
突然でごめんなさいね……?

いいえ……朱璃さんが遅刻しないようにお手伝いする
のは、加宮家の家政婦として、仕事の範疇です

もし寝坊などで遅刻して、朱璃さんが罰を受けるような
事になれば、亡くなったご両親に顔向けできませんし

う……気をつけるわ

そうしていただけると助かります……
では、いってらっしゃいませ

ええ、いってきます

(ガチャ……バタン)

(ヴォオン!ウォン!ウオオオォォン……)

……よく分からないけど、きっとスゴイ運転なのよね
いつもより、早く着いちゃったかも

(ピコン♪)

「新着メッセージあり」

あら、【主人公】かしら……
それともシャノ――!?

『泣き姫と戦えお前達をいつでも監視している』

……ああ、そう

まったく、順番に脅してくるなんて良い趣味してるわ

加宮(かみや)さん……?

うわっ!?

驚かして、ごめんなさい!
ちょっと怖い顔してたから、どうしたのかなと……

ええ、ちょっとストーカーみたいな人に狙われてるの

ええっ!?
そ、それって警察に届けた方が良いのでは?

ふふっ、冗談よ
……ゲームの話なの、ゴメンなさいね?

ゲームのお話ですか、驚きましたわ……
もう、さっきの仕返しですのね?

あら、分かった?
フフフ、早く行きましょう♪

ええ……でもまだちょっと怒ってませんか?
何か顔が怖いような……

そう?気のせいだと思うわよ♪
(はぁ……帰ったら集合しなきゃね!)

 

◆ ◆ ◆

 

~ホーム~

 

と、いうわけで……例のメッセージ、
私にも来ちゃいました~アハハハハ♪

怒りを通り越して笑いに……

だって、こんなのもう笑うしかないじゃない?
ウッフッフッフ~♪

その笑いが怖いです……

こうなったら、私たちで泣き姫を倒して懸賞金とやらを
頂いちゃえばいいんじゃない?

そうよ……そうすればこんな茶番もオシマイよね!

たしかに一理ある

【主人公】さんまで話に乗せられて……

この前は何とか勝てたかもしれませんけど、
次も勝てるとは限りませんよ?

だって何もしなかったら、あんなメッセージだけじゃ
済まないかもしれないじゃない?

それは……そうですね

だったら本気で泣き姫を探してあげようっていうのよ

まぁ、本当に倒せるかどうか分からないけど
一度は追い返した相手よ?

全く歯が立たないって訳じゃないと思うけど?

よし、やるか!

さすが【主人公】、話が早いわね♪

はう~鼻息が荒いジュリには逆らえないよー……

はぁ……泣き姫に関係する事でしたら、DDさんにも
声をかけた方が良いかもしれませんね

とてもわるいコ……さがす?

アルちゃんはお留守番してて欲しいけど……

アルジェの力が必要かも……

手伝ってくれる?

だいじょうぶ……アルジェもつよくなりたい……

 

~荒野~

 

それで、なぜ急に泣き姫探しを積極的にやる事に?

Katarooのメッセージが……

泣き姫と戦うように催促をされてるって……?
いったい誰に?

多分、あのゴーディンって奴だと思うわ

たしかにあのゴーディンならやりそうだわね
手段は分からないけど

という訳で、まんまと乗せられてるのは悔しいけど……

泣き姫を倒そう!

わかった、そういう事なら協力するわ

 

◆ ◆ ◆

 

それで、例の催促メッセージが届いたのは、誰なの?

私とシャノン、マルタの3人ね

まだうちには届いてない……

単に順番がまだ回って来てないだけじゃない?

アルジェにも、とどいてないよ……

あなたはKatarooを使えないでしょ!?
……使えないわよね?

たぶん……使えないと思います

むぅ~……

そういえばあんた達、その前に別のメールも
来てたんじゃなかった?

ええ……でもそのメールには「泣き姫から手を引け」と
まったく逆の事が書いてたんですよね……

じゃあ、そのメールの送り主はまた別人ってこと?
……妙な連中から絡まれすぎよ、あんた達

なぜだろう……

さぁね、類は友を呼ぶってこと?

GRRRRAAA!!

魔物に絡まれる方がマシだよねー……

 

◆ ◆ ◆

 

ちょっと、何かすごい勢いでこっちに向かってくるコが
いるんだけど

もうっ……なんでこんな……!

ラハム!?

えっ!【主人公】!?
それにみんなも!

ラハムさん、そんなに急いでどうされたんですか?

ちょっと今、エルザ姉とグル・カーンが揉めてて……

エルザーラとグル・カーンが!?
もしかして、とうとう爆発しちゃったの?

そう!そうなんだよ!
あたし、どうすれば良いんだか……

とにかく案内して!

うん、わかった!

私はこれ以上、面倒に巻き込まれたくないんだけど……
はぁ……仕方ないわね、今回は一緒に行くわ

 

◆ ◆ ◆

 

あそこだよ、【主人公】!

傭兵団の団員がかなり集まってる?

あれ、ほとんどがグル・カーンの仲間なんだよ!

よくもこれだけの者たちを巻き込んでくれたものだな
お前がそれほど寂しがり屋だったとは知らなかったよ

ほざけ、ここにいるのは皆、お前について行くのは
もう飽きた、という者ばかりなんだが?

勘違いしているようだが、私は皆について来いなどと
強要した憶えはない

元より都市解放傭兵団は、軍ではない
上下関係などない、自由な集まりだ

あるのは封印の魔物を狩る者たちの拠り所たる役割
ただ、それだけ

自由というのならば、このまま俺が同志を連れて
出て行くのも構わんのだろうな?

フッ……同志とはまた大きく出たわね

グル・カーン、お前が出て行くのは構わん

だがその結果、デスイーターとの対立が激化し、
傭兵団に残った者が迷惑を被るのであれば、話は別だ

そいつは俺の責任じゃないな……元から傭兵団を
襲っている、ヤツらが悪いんだろうが

落ち着いて

【主人公】か、なぜここに?

さっき、そこで偶然会ったんだよ

ラハムの様子がちょっと尋常じゃなさそうだったから
来てみたの

デスイーターの人たちは、泣き姫の懸賞金を狙ってる
だけだと思います

傭兵団の皆さんが、懸賞金を狙う上で邪魔になっている
から襲ってくるんじゃないでしょうか……

もちろん、そうだろうさ
この傭兵団は人数だけは多いからなぁ?

だがなぁ、今はただそれだけの仲良しゴッコの集まりに
すぎん、ただのしょっぱいヤツらだ

俺ならこの“TheWorld”で一番強力な一団を作れる!
デスイーターを潰して、その力を示してやるぜ!

ふん、語るに堕ちたな
結局はお前が野望を成就したいだけなのだ

今、この“TheWorld”にはまだ
覇権を握っているに値する奴も巨大ギルドも無い!

だったら、今が好機ってやつじゃねぇか?

お前らが解放した都市は、いつかこのグル・カーン様が
仕切らせてもらうぜ!

勝手なことを……

じゃあな腰抜けども……デスイーターは俺たちが
潰してやるから、魔物でも狩って遊んでな……

ハッハッハァ!

グル・カーン!
お姉たちをバカにするなんて許さない!

(ザザッ!)

おっと、デスイーターにおびえる腰抜けどもには
俺たちが稽古をつけてやるぜ!

稽古なら間に合ってる!

 

◆ ◆ ◆

 

グル・カーン……以前より血の気が多い輩と思っては
いたが、そこまで大それた事を考えていたとは……

デスイーターの連中を舐めてる

あなた方はデスイーターとはとても因縁が深そうですし
色々と多くの情報を持っておられますわよね?

それを踏まえての評価なのであれば、やはりそうなの
でしょうね……

おっと、よそ見をしてるヒマはないぜっ!

 

◆ ◆ ◆

 

大口を叩く割には、全く歯応えがないじゃないの

こんなのでよくデスイーターを潰すとか、街を仕切る
なんて言ってられるわね……

痛い目をみないと分からない

そうね……本当に死ぬわけでもないし

暴走して気を失う訳でもなし……ね

貴方の場合は特殊すぎるでしょ……

けっこうやるぞ、こいつら……

おい、何を手こずっていやがる!

お、おう!

 

◆ ◆ ◆

 

くそっ、何で倒せねぇんだ!

みんな、つよいんだよ……!

アルジェ、そばを離れないでね

うん……
みんなのおうえん、する……!

可憐な少女の応援を受けては、負けるわけには
いかないな

あら、エルザが負けるところなんて
今まで見た事がないけど?

くっ……弱そうなあのガキから倒せ!

ふわ……?

怒らせたいみたいだね!

あんた達、ここにいる全員を本気にさせたわよ!

 

◆ ◆ ◆

 

ぐわっ……どいつも強すぎる!?

腰抜けなんて言ったのは誰よ!
あんたらはその腰抜け以下なんだからね!

心が折れる音がする……

ち、ちくしょおぉ……

まぁ、腰抜けって言ってたのはグル・カーン
だけどね……

グル・カーンって言いにくい……
もう、グルグルで良いよね……

で、まだやるの?

そ、そろそろ本気を出させてもらうぜ!

是非、そう願いたいわね……やれやれだわ

 

◆ ◆ ◆

 

チッ、まったく不甲斐ない奴らだぜ……

おい、お前……【主人公】といったか
どうだ、その強さを俺に貸すつもりはねぇか?

笑うところかな?

笑いたければ笑えばいい……だがなぁ、弱い奴らを
その気にさせてまとめるのも、大事なスキルなんだぜ?

ペテン師の才能もあるとは知らなかったぞ……

いい加減あきらめたらどうだ?
お前の力ではデスイーターを潰すことなど不可能だ

いい気になるなよエルザーラ……
おいベリチュール、相手をしてやれ

……お望みとあらば

往生際が悪いわね、もう!

彼女はかなりの手練れだと聞いたことがありますわ
気を抜いては痛い目を見ますわよ?

これで諦めさせる

 

◆ ◆ ◆

 

ほう、予想以上の戦闘力……
今回は敗北を認めるほかないようだ

ますます、気に入ったぜぇ……
お前の力は俺が手に入れてやる……!

全く心に響かないよ

へへっ……俺は手に入れると決めたら、絶対に
手に入れるんだよ……絶対にな!

目標を高く設定するのは良いが、高すぎて
見えなくなっているのではないか……?

エルザ、今はこの男に何を言っても届かないわ
そういうものよ……

まだ俺についてくる奴はいくらでもいる……
このまま終わりだと思うなよ……!

(ブゥン……)

ログアウトしたみたいね

そのようだ……
ところで、先ほどから挨拶も出来ていなかったようだ

……私の事?
別にいいわ、ただの通りすがりで

厄介事には巻き込まれたくないもの……

そうだな、だが今日の出会いの印に紹介だけは
させてもらいたい

都市解放傭兵団のエルザーラだ

おなじく、イシュミル……
エルザの補佐みたいな事をしているのよ

おなじく、ラハムだよ!
あんたもけっこう強いね!

わざわざ、どうも……

DDよ、忘れてくれて構わないわ

DDか……今日は有難う

別に……通りすがっただけよ

見ての通り素直じゃないんだ

そういうのは止めなさいってば、もう!

 

傭兵団の連中が内部分裂で大騒ぎしてるのは
なかなか見ものだったけど……

【主人公】たちまで首を突っ込みすぎ
てるのはあまり好ましくない展開よね?

忠告があまり効いてないようだな……
本当に手を焼かせる奴らだ

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