.hack//New World

わたしをみつけた:泣き姫


アルジェの消失後、おぞましい殺意をまとって再び立ちはだかったゴーディン。
漆黒に渦巻くゴーディンの影が、一行を喰らうが如く迫り来る。
長きにわたる熾烈な戦いの果てに、ついに【主人公】の放った一撃がゴーディンに突き刺さる。
因縁の戦いに終止符を打つ時がやってきた――


~溶岩地帯~

 

ぐああっ!!

【主人公】さん、お見事です!

今度ばかりは、ゴーディンも
起き上がれはしないでしょう

“永滅の戒”を侮りましたね

強襲如きで
私たちの結束は、破れはしない

クッ……おのれ……

はぁ!?こいつ、まだ!

【主人公】……
よくも、邪魔を……

このままでは、終わらん……
潰す……今、ここで……

(ピシッ)

ウッ!

なに!?なにが起きてるの?

ゴーディンの体に亀裂が……

それだけじゃない……
ヒビ割れから、黒い泥が……

なんだ……これは……
体が喰い破られるっ……!

ぐわああああっ!!

一体、なにが起きてるんですか……?

【主人公】、見て……!
ゴーディンから溢れた泥が……

蠢いてる……
まるで、生きてるみたいに……

ゴボ……ゴボゴボ……

ゴボゴボ……ゴボゴボ……

アナタハワタシヲミツケタ……

泣き姫!?

黒い泥が泣き姫に!?

どういうこと……?
ゴーディンが、泣き姫を呼び戻した……?

でも、ゴーディンの様子……
想定外みたいだったし……

ウグッ……泣き姫……

ハハッ……アハハハッ!!

戻った……最悪が戻って来たぞ!

この“世界”の全てを消し去れ!
誰もかも!なにもかも!!

【主人公】
お前も、お終いだ……

アハハハッ……アハハハッ……

(バキバキ……バキンッ!)

ゴーディンめ……砕け散りましたか

アナタハワタシヲミツケタ

ミツケタ……

否……

ワタシハ……

ワタシハワタシヲミツケタ!!

 

~認知外空間~

 

ワタシハボウキャクヨリトキハナタレタ

スベテヲメッスル

コノセカイノスベテヲ

えっ、ここは!?
どうなってるの?

風景がありません
溶岩地帯は、どこに……

君たち、案ずるな
ここは認知外空間だ

【主人公】
完全消滅とはいかなかったか

再び現れた彼奴は
泣き姫の痕跡の集合体

君と同じく力を持つゴーディンに
潜伏していたのだろう

【主人公】
あれは、絶望を撒き散らす暗黒の姫だ

泣き姫を止めろ!
でなくば、「The World」が危機に陥る

泣き姫は、この「The World」の中枢で
“自滅”のサブリミナルコードを発動するつもりだ

そうなっては
この“世界”のプレイヤー全てに被害が及ぶ

そして、これは
最も憂慮すべき事態だが……

“自滅”がゲームを超えて
リアルに影響を及ぼす可能性がある

それって、被害を受けた人が
リアルで“自滅”を……いや、まさかそんな!

プレイヤー全てとはいかないだろうが
しかし、最悪の事態は起こりうると考えた方がいい

“全て”じゃなくても
大変なことになりませんか……?

だって
「The World」のユーザー数って……

全世界におよそ3000万人……

起きる事態は、考えたくもないわね……

【主人公】、やるわよ!

泣き姫を止められるのは
私たちしかいない!

【主人公】さん
平和な“世界”を取り戻しましょう

みなさんと出会ったこの場所を
私、泣き姫に汚されたくありません!

私も同感だよ……

この“世界”は大切な居場所……
奪わせはしない……

行こう、【主人公】……!

これが、正真正銘
最後の戦いってわけね

【主人公】
私たちの決意は固まったわ!

みんな、泣き姫を消滅させるぞ!

主よ「泣き姫」の情報を調べてきたので
伝えておくぞ

軽装でありながら呪紋攻撃も使用しよるなど
これまででも最大の強敵となる奴じゃ

超級の奴はこの世界の力を取り込むことで、
さらに強力な攻撃をしかけてくるじゃろう

これを阻止しなければ勝利は
難しいじゃろうのう

主なら必ずや、この泣き姫を
消し去ることが出来ると信じておる!

健闘を祈っておるぞ!!

 

◆ ◆ ◆

 

アァ……コレデ……ワタシハ、消エルノカ……
ヤット……ヤット……!

泣き姫……?

ワタシハ……ミズカラ、消エルコトハデキヌ……
故ニ、ワタシハ……「オマエ」ガ必要ダッタ……

泣き姫は「あなた」を見つめた――

滅スルコトヲ望ムワタシヲ、ミツケルコトガデキタ、オマエガ……

泣き姫もまた「自滅」願望を持って生まれたのか
自滅を撒き散らす者が、最も自滅を望んでいたとは皮肉な話だな
だが「カタリスト・システム」が……人々の尽きぬ
欲望と畏怖が、それを許さなかったのだろう

『その悲しみが世界を覆いつくすまで、涙の湖は、枯れることなくこんこんと――』
皆の悲しみを背負って涙を流し続ける泣き姫は、欲と畏れにまみれ、捻じ曲げられてしまった……

ワタシハ……人々ノ……願イノ、鏡ニスギヌ……

私も百合も、泣きたい時には自分で泣くことにするわ
お互いに悲しい事も、嬉しい事も分けあってね
だから、あなたはもう泣き続ける必要はない
笑って消えなさい……

アァ……強ク、ナッタ……ワタシ……ノ……

(シュウゥゥ……)

泣き姫が消えていくわ……

ええ……穏やかな顔です
あれが本当の泣き姫の顔なんですね……

私も百合も、泣き姫のおとぎ話にエンディングは、作れなかったけど、これで良かったのかな……

『それから泣き姫の涙を見た者は、誰もいませんでしたとさ……めでたし、めでたし』
で、どう……?

ありがちね……
でもまぁ、悪くないんじゃない?

ニンリルが「あなた」に語りかけた

「王の瞳」を受け継いだ時、君が何かを願ったのではなかった……
あの泣き姫が自ら消えたいという願いを、君が見出し、受け止めたのだな
アルジェの願いもまた君が見出し、受け止めた……
ふっ、なんという女神の悪戯か

ニンリルが背を向けた

あの時、あの森で、君達が出会えた奇跡に祝福を、だ
……さらば

そうね、私たちも戻りましょうか?

はい、私たちにはまだやらなきゃいけない事がありますからね

かくれんぼは終らせないとねー……

ええ……

帰ろう、我がホームへ!

今すぐ探しに行こう!