「The World」の開発運営を手掛けるCC社が |
そのMONOREAL社の息がかかった研究チームが、 |
その研究チームの名は……「ARIS(アリス)」 |
なんの実験を? |
あらゆる分野の基礎実験に絡んでいると聞く |
MONOREALの基幹事業や、インフラ技術……例えば |
ナノマテリアル技術、生体技術にまで手を伸ばしている |
MONOREAL……そうか、父さんや伯父さんの会社も |
まぁ、そうだったんですか? |
それほど今のMONOREALは大小様々な企業を傘下に |
身近な物では、君達がコミュニケーションを取っている |
そんなことより、今「The World」で実験を行って |
妹と……百合と関係があるの!? |
急かさずとも教えてやろう、ARISが行っている実験、 |
◆ ◆ ◆
「カタリスト・システム」……? |
そうだな……間違いではない |
簡単に説明すれば、カリスマ性の力を使って他人の |
カリスマ性……? |
この実験の場合は、単純に人の注目を集める力だ |
良いのは分かるけど、悪いことって? |
何気ない一言や、存在自体が目立つ者がいるだろう |
時にそれはヒーローを生むが、その逆もある…… |
重要なのは、人々の関心を集める存在感そのものだ |
MONOREAL社は世界の情報を「単一化」管理する |
そこから発信する情報の注目度、そして価値を高めれば |
その価値を生み出せるカタリストの能力をシステム化 |
情報発信源として価値の高いカタリスト…… |
別に悪い事ではない? |
その通りだ……利益を求めるための企業努力の範囲と |
もしかして、泣き姫にかかっている懸賞金も…… |
カタリストによる暗示が浸透し、噂が現実味を増した |
待って……泣き姫も実験の一部なの? |
そこがARISの思惑から外れた、本当のイレギュラー |
クッ……! |
◆ ◆ ◆
「泣き姫」の出現を筆頭に、実験の想定外な現象が |
あるステージ……? |
どんな現象? |
ARISも想定していなかったイレギュラーが泣き姫と |
時折、突然好戦的になったりした者や、情緒不安定に |
ARISは「カタリスト・システム」の可能性を広げた |
人の意志に加え、様々な感情を動かす法則の調査と |
バリゾーがおかしくなったのも? |
キャラが暴走することはあっても、プレイヤーが暴走 |
感情をコントロールする暗示をかけ、彼を昂揚させ |
そこまでくると、人体実験だね…… |
私達、知らないうちにそんな事をされていたんですか? |
確かにそうだな |
KIEEEEEEEE……
◆ ◆ ◆
それで実験の想定外なイレギュラー現象ってなんなの? |
「カタリスト・システム」は「The World」内から、 |
そのイレギュラー現象は、全くの逆だ |
プレイヤーの意志……強い願望が「The World」に |
ARISでは「リアライズ・バースト」現象と呼称して |
バリゾーが変身したのも…… |
あれも「リアライズ・バースト」現象のひとつに |
力を欲し、その漠然とした力のイメージが自らの姿を |
ムムム~……! |
な、なに? |
だめだ、発生しないよ…… |
……何を願ったのかは知らぬが |
何時でも誰でもその現象を発生させられる訳ではない |
少し胸を割り増してみようかと…… |
KIEEEEEEEE……
ほら、マルタが下らない事をするから魔物が! |
えぇー……!? |
◆ ◆ ◆
「リアライズ・バースト」現象に関してはARISも |
恐らく「The World」に存在するブラックボックスに |
あれは誰も触れる事の出来ない、気まぐれな領域ゆえ |
それゆえに実際その現象に関わった冒険者、そして |
そう、まれに「The World」に刻まれた過去の記憶から |
過去の冒険者の放浪AIがな…… |
過去の記憶? |
かつての「The World」で活躍した冒険者……その |
過去の「The World」に深く関わった者達が、その時間 |
なぜその様なことが可能なのかは、先ほども言ったが |
その過去の英雄たちの「強い想い」が核となって出現 |
あるいは今の「The World」に合わせて記憶が |
君達も何人か出会ったのではないか? |
誰の事か分からない |
一見、今の冒険者たちと変わらないほど自然に振る舞う |
「リアライズ・バースト」……それがあの「泣き姫」を |
そう推測するのが、正しいだろうな…… |
………… |
DD、どうかした? |
ごめんなさい……何でもないわ |
それより、また敵よ! |
は、はい……! |
◆ ◆ ◆
さて……「泣き姫」は「リアライズ・バースト」という |
かつての「The World」の記憶から生まれた訳では |
………… |
DDに心当たりがあるみたい |
ほう……たしかに「泣き姫」の事に関してはDDに |
……だが「このDD」は、違うらしい |
それは妹……百合がプレイヤーとしてDDを動かして |
「泣き姫」は昔……私たち姉妹が幼かった頃に |
泣きたくても泣けない、世界の誰かの代わりに |
……そんな暗くてさびしい、おとぎ話よ |
どうしてそんなお話を創ったんですか……? |
さぁ、どうしてかしらね…… |
私が泣きたくてもガマンする方だったから…… |
「沙夜(さや)ちゃんは悪くない……代わりに泣き姫が |
沙夜? |
あっ……ど、どうでもいいでしょ、そんなの! |
いえいえ……素敵なお名前ですね、沙夜さん? |
もう覚えなくていいわよ、忘れて!忘れなさい! |
沙夜っち~…… |
あんたね……いきなりそれ? |
敵が来たよー…… |
そう言うのは、早く言いなさいよ! |
◆ ◆ ◆
君は泣き姫の発生には、君の妹……つまり「元のDD」 |
私にはそうとしか考えられない |
本当の泣き姫のイメージと違う? |
そう……私と百合が創った泣き姫は、もっと優しく |
あんな、恐怖の象徴なんかじゃない……決して |
前も言ったけど、ネットでトラブルがあって…… |
「その悲しみが世界を覆いつくすまで |
そんな救いの無い話になっていたわ |
恐怖というより寂しい |
そうね…… |
あの……こう言ったら失礼なのかもしれませんけど |
今の泣き姫は、あなたの知らない百合さんのイメージを |
……言い返したいところだけど、強く言い返せないわね |
百合とは、しばらく言葉を交わしてもいない時間が |
君の中に存在する無意識の闇は、なかなかに深そうだな |
泣き姫を追って、君は何をしたかった? |
私は………… |
KIEEEEEEEE……
……丁度いいわ |
◆ ◆ ◆
もう頃合いか……ネットスラムに戻る |
見極めは? |
君達に現状は伝えた…… |
君達とアルジェだ…… |
アルちゃんに、百合さんの行方…… |
ただのゲームだと思っていた「The World」で、 |
ウフフー……たぎるね…… |
私は【主人公】に任せるわよ? |
私は…… |
まぁ、待ちたまえ…… |
KIEEEEEEEE……
あの敵を倒せば、帰還ゲートだ |
◆ ◆ ◆
~ネットスラム~
(シュォオオオオオオオオオオオオオオオン……)
戻ったぞ、君達 |
お待ちしていたでありんす…… |
留守中は特に問題ありんせん、主さま |
お嬢も、お客人も無事でありんす…… |
……ぐごぉ…… |
バリゾーさんなら、さきほど寝オチしましたよぉ~♪ |
みんな……おかえり……へへ |
ただいま、アルジェ |
もう、だいじょうぶ……? |
ええ、もう大丈夫 |
いちどリアルに戻るのも良かろう…… |
そうね……少し休みましょ? |
頭を整理しないと |
はい……私も少し頭を冷やしたいです |
さすがにオーバーヒートだよ…… |
もう行くの……? |
はう……またすぐに戻ってくるからね? |
ニンリルさん、アルちゃんのことをよろしく |
心得ている |
私はもう少し散策してますので…… |
そう……? |
はい、またあとで |
おつ~…… |
(ピコン♪)
「新着ニュースあり」 |
『昨夜、都内ネットカフェにて「桐生一彦」さんが |
『警察は何者かが桐生さんを襲ったと見て捜査を |
桐生一彦……どこかで聞いたような |
(ピコン♪)
「新着メッセージあり」 |
『【主人公】、ニュース見て』 |
『ネットカフェで襲われた桐生一彦って…… |
まさか…… |
『間違いならそれでもいいけど…… |
ゴーディンか……!? |
『……またあとで、連絡するよ |