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第十章 4話:ねがい

消えル……俺……が……
……オレ……ガ……

イガイ……ニ……ツマランモノダ……ナァ……

(シュウウウゥ……)

……サァ……見ツケタゾ、我ガ半身ヨ

このような所にまで現れるようになるとは……
お目当ては君か、【主人公】

他の場所で暴れられるよりはいい

なるほど、あえて餌となるか
その意気や良しだな

あら、泣き姫なんかに【主人公】は
渡さないけど?ねぇ、みんな?

そうです、【主人公】さんは大事な
仲間です!

モテ期だね……うらやましいけど
【主人公】なら、仕方ない……

あんた達、ふざけてる場合じゃ……待って
泣き姫の様子が……涙を流してる?

何ダ……これハ……我ガ瞳カラ溢レル……これハ……
ワ……レ……わた……し……ヲ……

あなた……わるい子じゃ、ない……
だれ……なの?

えっ……?

……ェエエイ……我ハ、我ダ……!
忌々シキ……娘……!

アルジェを守る!

【主人公】さん!

はぅ……

ク……何故、動カヌ……!
オノ……レ……!

何かが、泣き姫に起きてる……
まさか……これは……

サ……ヤ……

!?

ワタシヲ……ミツ……ケテ……

百合!!

泣き姫が百合さん!?

そんな……いや、まさかそこに!?

クゥ……オノレ……!

(シュウウゥゥゥ……)

あっ消える……逃げる気だよー!?

待って!!

ネットスラムを緊急隔離!

ラジャー、でありんす!!

(ゴウンッ!)

(シュウウウウウゥゥン……)

消え、た……

今、ネットスラムを他のエリアから隔離しようと
試みたが、認知外空間に逃げられた

今なら認知外空間の泣き姫を追い立て、再びこの
ネットスラムに呼び戻す事が可能かもしれないが……

どうするかね?

やるに決まってる

【主人公】……ええ
少しでもその可能性があるのなら、行くわ!

そうね、急ぎましょ!

はい、今なら手が届くかもしれません!

チャンスは絶対、モノにする……
それがマルタ……

あんた達……ありがとう

お礼なら百合さんと一緒に

ええ、必ず……!

茜たちには認知外空間のモニターをしてもらう……
アルジェ……お前はどうしたい?

アルジェも、みんなと行きたい……

そうか、好きにするがいい……

うん……!

では認知外空間へのゲートを開くぞ

行くぞ!

ええ!

 

◆ ◆ ◆

 

~認知外空間~

 

DD、君の妹についての仮説と問題点を
先に伝えておこう

問題……?

確認だが、君の妹は行方不明になっている、
ということだったな……どれくらいになる?

数か月になるわ……なぜ?

残念だが、君の妹は「リアルデジタライズ」に類似する
現象に巻き込まれた可能性がある

えっ!?

生身で電脳空間に入るとかいうアレ?

そう、先ほど説明した通りだ
憶えていたようで何より

まさか、百合がそうなってるっていうこと……!?

そうだ、しかも泣き姫と同化している可能性がある
という、更にレアなケースといえるだろう

そんな……

ちょっと待って、敵よ!

GRRRRRRR……

しかもあれ、泣き姫が放ったヤツかも……

 

◆ ◆ ◆

 

この魔物、いつもの泣き姫が放った魔物と違って、
倒した後に甦りません!

泣き姫の力が弱まっている?

DDの妹の意識が表に出てきた事に起因するかも
しれない……これを吉と取れれば良いが

百合……!

とは言え、決して予断は許さない状況だ

数か月という長い期間、別の存在と同一化した状態で
電脳空間に居たのだからな

通常であれば「認知外依存症」が発症し、自我を保てず
「個」としての存在は消失してもおかしくはないはずだ

そんな!

諦めない!

……ええ、私も諦めないわ
絶対に!

これまでの事例から考察される状況を伝えたまでだ

今回そうなっていないのは、何か特別な力が働いている
と考えた方がいい……これは、良い傾向といえる

私達は最善を尽くすだけってことね!
絶対に助けるわよ!

はい!
そのために私達はここにいるんですから!

泣き姫ちゃんの悪あがきを、
ドンドン蹴散らしてくよー……!

 

◆ ◆ ◆

 

どうして百合がこの世界に取り込まれたりしたのか……

百合さんがそう願った?

百合が?
まさかそんな願いをするなんて……

いや、ここしばらく百合と私はお互いほとんど話も
せずにいたからね

現実から消えたいっていう願望が無かった、とは
言いきれない……

DDさん、あとで百合さんといっぱい話さないと
いけないみたいですね

そうね……話すわ、たくさん

GRRRR……

敵発見だよー……!

ワタシヲ……ミツケテ

魔物の先に泣き姫がいる!

【主人公】!

ええ、わかったわ!
こんな魔物、蹴散らすわよ!

 

◆ ◆ ◆

 

いたわDD、【主人公】!
泣き姫よ!!

ヌウゥ……

来たぞ、泣き姫!

オノレ……!
オノレェ……!!

百合!私、沙夜だよ!

知ラヌ……貴様……ナド……!

サァ、行クノジャ……

GRRRRRAAA……!

往生際が悪いよ……!

認知外空間を封じて、ネットスラムへ泣き姫を追い出す
ここに長居は無用だ

君達、彼女らをひきつけておきたまえ

は、はい!頑張ります!

 

◆ ◆ ◆

 

エエィ……ウヌラ……!

さぁ、行きたまえ泣き姫
そこを君の終焉の場としよう

クッ……!?

 

~ネットスラム~

 

ネットスラムをネットワークより隔離

ラジャー、でありんす!!

もう逃がさない!

ヌゥ……声ガ……届カヌ……
我ヲ畏レ、渇望スル数多ノ声ガ……

これでこのネットスラムから出る事は出来ない

ヤリオル……ガ、及バヌ!

強がってられるのも、今のうちよ!

私は絶対に、百合を取り戻す!

ユ……リ……
クゥッ……!

ユ、リ……サ……ヤ……ナキ……ひめ……
わた……シ……ハ……だ……レ……

これは「認知外依存症」の症状か……?
自分が何者なのか固定出来ていない

百合!?
あんたは、私の妹の百合よ!!

ナラバ……奪ウガ良イ……
ソレガ、貴様ラノ強キ願イナラバ!!

 

◆ ◆ ◆

 

オオオオオオオオオオオオオォォォ……!
ワレ、ハ……ワタシ、ハ……

ナキ……ヒメ……ユ、リ……

アルジェ、今だ!

わるいコは……ダメ、だよ!

!!

(ドサッ……)

うぅ……

百合……!?

う……沙夜……?

百合……!
ゴメン……遅くなって、ゴメン……!

泣き姫と百合さんが別々になりました!
アルちゃん、やったわ!

わるいコ……まだ、いる……

無駄ジャ……我ハ消エヌ……

我ヲ求メシ者ガアル限リ……幾度デモ甦ル……!

何度だって倒してやる!

そうよ、【主人公】と私達があんたを
何時でも倒してやるんだからね!

だめ……絶対に、甦らせてはいけないの!

百合!?

泣き姫は、自滅願望を心に呼び起こさせる力を
持ってる……!

自分の意志に関係なく、自ら命を絶たせるほどの力……

なぜ百合がそんなことを知ってるの!?

泣き姫を生み出したのは私だから……

最初は噂のつもりだった……
それが、いつのまにか本当に生まれたの……

君が流した噂が「カタリスト・システム」で真実味を
帯びた結果「リアライズ・バースト」で顕現したのか

君はよほど「カタリスト」としての高い素質を
持っていたのだろうな

あの泣き姫の力を生み出したのも、私……だから私は、
彼女の中で、彼女を止めようとしていたの……

泣き姫を……
彼女を自由に暴れさせちゃいけない……!

じゃあ、どうすれば……!

わるいコは……アルジェが、ゆるさない……

アルジェは世界を守るために、生まれた……

アルジェ、世界も、みんなも、守る……!

アルジェ、何を!?

コノ、小娘……我ヲ取リ込ム気カ……

……善キ覚悟ジャ……

(シュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!)

アルちゃん!

…………け……ぷ

アルジェ……馬鹿な真似を!

アルジェ、大丈夫か!?

大丈夫な訳が無い!
無限に増殖する不正因子を内部に取り込んだのだぞ!

今のアルジェに、この泣き姫を浄化する力など無い……
アルジェがオーバーフローするのも時間の問題だ

そ、そんな……!

まして、世界中から泣き姫の記憶を消去すること
など出来るはずが……いや……

手があるの!?

その可能性がある、という程度の問題だ

DD……

君が授かった「銀の角」には、イリーガルなデータを
浄化する力がある……

じゃあ、またこれをアルジェに……

いや、もはやその角はDDと同化している

それに、それをアルジェに使ったとしても、アルジェの
中の泣き姫を浄化することに意味は無い

そこで【主人公】……

君が「王の瞳」の力を引き出せば、泣き姫と同じ程の
強力なサブリミナルコードを発生させる力を持つ

そして、君自身も恐らく「カタリスト」としての高い
資質を持っているのだろう

そして、百合……

君は泣き姫を世界に実体化させるほどの力を持った
優秀なカタリストだ

三人の力で、泣き姫の記憶を全て消し去るサブリミナル
コードを世界中に発信できれば……

泣き姫を求める者も存在しなくなり、再び泣き姫が
生み出されることもなくなる……かもしれない

かもしれないって……
出来るかどうか分からないの!?

荒唐無稽なことを言っていると、自覚している
しかし、それ以外に私に策は無い……

それに、そのサブリミナルコードを精製するには
アルジェ……お前が必要だ

……うん、わかった

えっ……ちょっと待って下さい……

アルちゃんが必要って、どういう意味ですか……?

泣き姫のコア情報を内部に持つ、アルジェ自身が
泣き姫を消滅させるサブリミナルコードのソースだ

待って……
待って下さいっ……

【主人公】……
アルジェに「王の瞳」の力を使うのだ……

DD、百合、君達はアルジェと接触した状態で
泣き姫の消滅をイメージしてくれればいい……

アルジェはどうなるの……?

分からない……最悪の場合、泣き姫の消滅と同じく
アルジェも消滅するかもしれない……

イヤです!!
そんなの、絶対にイヤッ!!

他に方法はないの……!?
ねぇ、ニンリルは頭、良いんでしょ!

これが現状、最も可能性として高いだろうという策だ

……どちらにせよ、このままではアルジェは破壊する
世界中に存在する、泣き姫の記憶によってな

であれば、それが最も有効なアルジェの……使い道だ

そんな……あなたがアルジェを生み出したんでしょ!?

ニンリルさんが……この人が何の感情も躊躇もなく、
アルジェを犠牲にするとでも思ってるの……?

こんな事にならないよう、この人はあなた達に忠告した
のよ……?「泣き姫から手を引け」って……

ごめんなさい……
私、言いすぎた……

それは分かってます……
でも……それでも……私は……!

あのね……

アルジェ、色んなヒトとお話ししたかったの……
それが、アルジェの「ねがい」……

【主人公】がアルジェを見つけてくれた
そして、お姉ちゃんたちに会った……

それから色んなヒトとお話して、歌って、
楽しかったよ

あり……がと……

でも……今はね、みんなを守ることが
アルジェのいちばんの「ねがい」なの……

でも、アルジェのことは皆で守るから

アルちゃん……絶対に、またお話するから!
私、約束するからね……!

うん……

ええ、そうよ……アルジェにはまだ色々と
教えないといけないん……だからね!

へへ……わかった……

そういう時の返事は……
イェッサーだよ……!

いぇっさー……

アルジェ……あなたは作り物の人形なんかじゃない
酷い事を言って、ゴメンね

ううん……

百合……あんたに紹介するわ
この子は私の小さな友達で……立派な仲間よ

知ってるよ……泣き姫の中から見てた……
私とも友達になってね……私、友達少ないの

わたし、アルジェ……お友だち、だよ

アルジェ……
お前の願い、お前の決めた事は全て正しかったよ

お前を生み出して、良かった……
君達にも感謝する

へへ……

(ジジッ……)

泣き姫のデータがオーバーフローし始めた……
もう、長く保てないだろう

【主人公】……

みんな、アルジェと手を繋いで……

アルジェちゃん……手を握ってもらえる?

ヘヘ……

私も……ねぇ、みんなも一緒に握ってくれるんでしょ?

はい!
私もアルちゃんと手を握っていたいです!

なんだろ……本当に手を握ってるみたいな気がする

うん……小さな手だね

茜、ネットスラムの隔離を解除……
アルジェの背後にあらゆるチャンネルへのゲートを……

……承知

(キィイイイ……)

【主人公】……頼む

「ゲイズ・オブ・ドミネーター(G.O.D.)!」

バイバイ……

アルちゃーーーーん!

(キィイイイイイイイイイイイイイイイ……ン)

アルジェ……?

アルジェは……!?
アルジェはどうなったの……!

……消えた

(……………………)

(パサッ)

何か落ちた……
……これって!

これ……アルジェにあげた服なんだよ……
返さなくていいんだよ……バカ!

アルちゃん……

ううっ……アルちゃあん……
うあああああああああああああああああああぁぁぁ……

わたしをみつけた へ